第1弾「社労士の目的条文の覚え方」で、主要8科目+徴収法+社労士法の1条を10本並べました。ただ、あの10本を書き写して「目的条文は済んだ」と思うと、一般常識で足をすくわれます。労一・社一の側には、この記事で並べるだけで19本の1条があるからです。
19本を丸暗記はしません。原文で並べると束ね方が見えてきます——「◯◯法と相まつて」の鎖と、「共同連帯」の一族。そして「目的条文=第1条」という思い込みを外すこと(国保法は、1条だけ読んでも何の給付をする保険か分かりません——後述します)。
労一の12本——「相まつて」の鎖
| 法令 | 1条の見出し | 入口・特徴の一句 |
|---|---|---|
| 労働契約法 | (目的) | 「合意の原則その他労働契約に関する基本的事項を定める」 |
| 労働組合法 | (目的) | 「使用者との交渉において対等の立場に立つことを促進」 |
| 最低賃金法 | (目的) | 「賃金の低廉な労働者について、賃金の最低額を保障」 |
| 労働施策総合推進法 | (目的) | 「国が、…その政策全般にわたり、必要な施策を総合的に講ずる」 |
| 職業安定法 | (法律の目的) | 労働施策総合推進法を名指しして「と相まつて」 |
| 職業能力開発促進法 | (目的) | 労働施策総合推進法を名指しして「と相まつて」 |
| 労働者派遣法 | (目的) | 職業安定法を名指しして「と相まつて」 |
| パート・有期法 | (目的) | 「通常の労働者との均衡のとれた待遇の確保等を図る」 |
| 育児・介護休業法 | (目的) | 「職業生活と家庭生活との両立に寄与する」 |
| 男女雇用機会均等法 | (目的) | 「法の下の平等を保障する日本国憲法の理念にのつとり」 |
| 高年齢者雇用安定法 | (目的) | 「定年の引上げ、継続雇用制度の導入等」 |
| 障害者雇用促進法 | (目的) | 「職業リハビリテーションの措置」・「職業生活において自立することを促進」 |
見出しはほとんどが「(目的)」ですが、職安法だけ「(法律の目的)」です(社一側では、国保法が「(この法律の目的)」)。第1弾で見た国年法・厚年法の見出し違いと同じで、見出しはそのまま見分けの手がかりになります。
鎖の根元は、労働施策総合推進法
職安法1条は「労働施策の総合的な推進並びに労働者の雇用の安定及び職業生活の充実等に関する法律(昭和四十一年法律第百三十二号)と相まつて」から始まります(長いので、以下この記事では労働施策総合推進法と略します)。職業能力開発促進法1条も、同じ法律を名指しして「と相まつて」から始まります。そして労働者派遣法1条が名指しするのは職業安定法です。
第1弾で見たとおり、安衛法1条は「労働基準法(昭和二十二年法律第四十九号)と相まつて」でした。並べると、鎖になります。
- 労働基準法 ← 安衛法(相まつて)
- 労働施策総合推進法 ← 職安法・職業能力開発促進法(相まつて)
- 職業安定法 ← 労働者派遣法(相まつて)
労働施策総合推進法1条自身は、どの法律も名指ししていません。名指しされる側——鎖の根元です。
社一の7本——「共同連帯」と、1条で終わらない法律
| 法令 | 1条の見出し | 入口・特徴の一句 |
|---|---|---|
| 国民健康保険法 | (この法律の目的) | 「国民健康保険事業の健全な運営を確保し」 |
| 高齢者医療確保法 | (目的) | 「国民の共同連帯の理念等に基づき」 |
| 介護保険法 | (目的) | 「尊厳を保持し」・「国民の共同連帯の理念に基づき」 |
| 児童手当法 | (目的) | 「父母その他の保護者が子育てについての第一義的責任を有する」 |
| 確定拠出年金法 | (目的) | 「個人が自己の責任において運用の指図を行い」 |
| 確定給付企業年金法 | (目的) | 「事業主が従業員と給付の内容を約し」 |
| 船員保険法 | (目的) | 「職務外の事由による」給付+労災の給付「と併せて」職務上の給付 |
社一にはもう1本、第1弾で扱った社会保険労務士法があります。1条が「使命」、1条の2が「職責」という二段構えでした——「目的条文=第1条だけ」ではない実例の筆頭です。
「共同連帯」は、年金だけの言葉ではありません
第1弾で、国年法1条の「国民の共同連帯によつて防止し」を見ました。同じ語が、社一の2本にもあります。
- 介護保険法1条: 「国民の共同連帯の理念に基づき介護保険制度を設け」
- 高齢者医療確保法1条: 「国民の共同連帯の理念等に基づき」
国保法の目的条文は、1条+2条で1セットです
国保法1条は「国民健康保険事業の健全な運営を確保し、もつて社会保障及び国民保健の向上に寄与することを目的とする」——これで全部です。何の給付をする保険なのか、1条は言っていません。
それは2条(国民健康保険)の仕事です。「国民健康保険は、被保険者の疾病、負傷、出産又は死亡に関して必要な保険給付を行うものとする」。
つまり国保法では、入口として読むべき条文は1条・2条の2本組。「目的条文=第1条」の思い込みのまま1条だけ覚えると、2条側の空欄に手が出ません。
「有する能力」も横断ワードです——続きが4通り
「その有する能力」という句は、この記事の範囲では5本に出てきます。空欄で効くのは、誰の能力かと続きです。
| 法令 | 誰の能力か | 続き |
|---|---|---|
| 労働施策総合推進法1条 | 「労働者がその有する能力」 | 「を有効に発揮することができるように」 |
| パート・有期法1条 | 「短時間・有期雇用労働者がその有する能力」 | 「を有効に発揮することができるように」 |
| 障害者雇用促進法1条 | 「障害者がその有する能力」 | 「を有効に発揮することができるように」 |
| 職業安定法1条 | 「各人にその有する能力」 | 「に適合する職業に就く機会を与え」 |
| 介護保険法1条 | 「これらの者」(要介護状態となった者等)の「その有する能力」 | 「に応じ自立した日常生活を営むことができるよう」 |
| 介護保険法4条1項 | 国民(要介護状態となった場合) | 「その有する能力の維持向上に努める」 |
ここまでの束ね方をまとめます。
- 労一は鎖で覚える: 労基←安衛/労働施策総合推進法←職安・能開/職安←派遣(すべて「相まつて」)
- 共同連帯でつながる3本: 国年・介護・高医確——「等」の有無、「によつて」か「理念に基づき」かまで
- 「目的条文=第1条」で止めない: 社労士法1条の2(職責)・国保法2条(給付)も入口の条文群
- 有する能力は続きで見分ける: 有効に発揮(労総推・パート有期・障雇)/適合する職業(職安)/応じ自立(介護)
この先は「その先」——AIコーチ加入者の読み物です
ここまでが「試験ではここまで」。この先は、答えがそう決まる判断の構造(法律→指針・通達→判例のつながり)まで踏み込みます。
- DC法とDB法の1条は双子です——違いは2箇所だけ
- 憲法の名指し方は、2種類あります
- 「1条の隣」まで読む——理念と責務の条文
- 給付事由の並び順——健保・船保と国保で違います
- 労働組合法1条には、2項があります
- 持って帰る形