「臨時に受けるもの」が報酬でも賞与でもないのは、2つが同じ土台から枝分かれしているからです

2026.04.01 法令基準最終検証 2026.07.1713報酬賞与標準報酬月額

広告はありません。事実には出典がついていて、その場で原文を確かめられます。

学習中の方が、こんなつぶやきを投稿されていました。「臨時に支払われる賃金は報酬にも賞与にも該当しない、とか言われると余計にこんがらがるんですよね」。リプ欄にも「そう、それなんです」という声。
こんがらがるのには理由があります。「報酬か、賞与か」の2択で考えている限り、必ず詰むからです。2つの手前に、共通の土台がある。そこを先に見ると、順番で解けます。

報酬と賞与は、同じ土台から枝分かれする

まず条文から。健康保険法3条5項は「報酬」を、こう定義しています——「賃金、給料、俸給、手当、賞与その他いかなる名称であるかを問わず、労働者が、労働の対償として受けるすべてのものをいう。ただし、臨時に受けるもの及び三月を超える期間ごとに受けるものは、この限りでない」
続く6項の「賞与」も、書き出しは一字一句同じです。「労働の対償として受けるすべてのもののうち、三月を超える期間ごとに受けるものをいう」
厚生年金保険法にも、同じ形の定義が置かれています。3条1項3号が「報酬」、4号が「賞与」で、こちらも「労働者が、労働の対償として受ける全てのもの」から始まります。健康保険法3条5項・6項と厚生年金保険法3条1項3号・4号が対応関係にあることは、年金機構の事例集もそのままカッコ書きで示しています
つまり報酬と賞与は、「労働の対償として受けるすべてのもの」という同じ幹から枝分かれしている。これが土台です。
その土台の中身を、年金機構の事例集が言葉にしています。「報酬」及び「賞与」(=報酬等)は「労働の対償として経常的かつ実質的に受けるもので、被保険者の通常の生計に充てられるすべてのものを包含するものである」
だから、考える順番はこうなります。
関門問い外れると
1そもそも労働の対償か?報酬等に該当しない
2それを経常的・実質的に受けるか?報酬等に含まれない
3三月を超える期間ごとに受けるか?外れない。ここで報酬と賞与に振り分けられる
関門1と2で外れたものは、報酬にも賞与にも入りません。「臨時に受けるもの」がこんがらがるのは、それが関門3の話ではなく、その手前で退場するグループだからです。

関門1:労働の対償か

まず、そのお金が「働いたことへの見返り」かどうか。事例集が具体例を挙げています。
お金報酬等か事例集の理由
休業手当・休職手当・待命手当該当する病気欠勤中や休業中に支払われる手当であっても労働の対償
通勤手当・扶養手当・管理職手当該当する給与規程等に基づき経常的(定期的)に支払うもの
食事・住宅の提供(現物給与)含まれる雇用契約を前提とした提供
傷病手当金・労災の休業補償該当しない労働の対償として受けるものでない
解雇予告手当・退職手当該当しない同上
出張旅費・赴任旅費該当しない事業主が負担すべきものの実費弁償
見舞金・結婚祝い金・餞別金原則該当しない事業主が恩恵的に支給するもの
この関門には、逆向きの例外も置かれています。恩恵的に支給するものであっても、労働協約等に基づいて支給されるもので、経常的(定期的)に支払われる場合は報酬等に該当する——例として挙がっているのが「傷病手当金と給与の差額補填を目的とした見舞金」です
退職手当にも同じ形の例外があります。「毎月の給与や賞与に上乗せして前払いされる場合」は、通常の生計に充てられる経常収入と扱うことが妥当であり、報酬等に該当する

関門2:経常的・実質的に受けるか(=「臨時」の正体)

ここが、つぶやきの方がつまずいた場所です。条文をよく見ると、「臨時に受けるもの」を明文で外しているのは、報酬の側だけです。
厚生年金保険法も同じ作りで、「臨時に受けるもの」のただし書きがあるのは報酬(3号)の側だけです
では、臨時に受けるものは賞与になってしまうのか。ならない、というのが実務の答えで、その根拠は条文ではなく土台の側にあります。事例集は報酬と賞与を「報酬等」とまとめて扱い、その土台を「労働の対償として経常的かつ実質的に受けるもの」と説明したうえで、こう書いています。
「労働の対償として支給されるものであっても、被保険者が常態として受ける報酬以外のものは、『報酬等』に含まれない(支給事由の発生、支給条件、支給額等が不確定で、経常的に受けるものではないものは、被保険者の通常の生計に充てられるものとは言えないため)。ただし、これに該当するものは極めて限定的である。【例】大入袋
読みどころが3つあります。
  1. 「報酬等に含まれない」=報酬にも賞与にも入らない。ここが「どちらでもない」の出どころです。
  2. 除く理由がカッコ書きに書いてある。支給事由・支給条件・支給額が不確定だから、通常の生計に充てられるものとは言えない——保険料の土台にする「ふだんの生活費」に、当てにできないお金は乗せない、という筋です。
  3. 「極めて限定的」。挙がっている例は大入袋だけです。

関門3:三月を超える期間ごとか

土台に乗ったお金だけが、最後に「受け方」で振り分けられます。条文の線は期間です。三月を超える期間ごとに受けるものが賞与、そうでないもの(毎月など)が報酬。厚生年金保険法も同じです
この判定を支給回数で行う運用を定めたのが、昭和53年の通達です。まず用語に注意してください。通達がいう「賞与」は、毎月支給されるもの(=「通常の報酬」)以外のもの、という意味で使われています
その「賞与」の支給実態が次のいずれかに該当する場合、当該賞与は報酬に該当する
受け方扱い根拠
毎月支給される(通常の報酬)報酬健保法3条5項・厚年法3条1項3号
通常の報酬以外のもので、年4回以上報酬昭和53年通達 記1(1)
三月を超える期間ごとに受ける賞与健保法3条6項・厚年法3条1項4号
支給回数の数え方にも、細かい線が引かれています

ひとことで持って帰るなら

「報酬か、賞与か」の2択で考えない。まず土台に乗るか、乗ったら報酬か賞与か——この順番です。
「臨時に受けるもの」が報酬でも賞与でもないのは、2つが同じ土台から枝分かれしているから。土台から落ちたお金は、その先の枝分かれに進めません。

出典

この記事は 2026.04.01 時点の法令で書いています。法令・通達・判決文は著作権法13条により自由に利用できます。内容は必ず原文もご確認ください。 この記事の note 版は こちら(note版は公開時点のまま更新されません。最新はこのページです)。