クレーンの就業制限が覚えられないのは、表を丸暗記しようとするからです——線は5トンと1トンの2本だけ

2026.04.01 法令基準最終検証 2026.07.1710就業制限クレーン技能講習特別教育

広告はありません。事実には出典がついていて、その場で原文を確かめられます。

「クレーンの就業制限、去年出たから今年は出ないよね」——そう思いたくなる論点です。でも、覚えられない原因は出題予想でも記憶力でもありません。トン数と資格がバラバラに並んだ表を、そのまま丸暗記しようとしているからです。
この表は、2つの軸で組み直せます。資格3段のハシゴと、5トンと1トンの2本の線。順に、原文で確かめます。

「就業制限」は、政令が名指しした業務だけ

まず、就業制限とは何か。安衛法61条1項です。
「事業者は、クレーンの運転その他の業務で、政令で定めるものについては、都道府県労働局長の当該業務に係る免許を受けた者又は都道府県労働局長の登録を受けた者が行う当該業務に係る技能講習を修了した者その他厚生労働省令で定める資格を有する者でなければ、当該業務に就かせてはならない」
読みどころが2つあります。
ひとつめ。対象は「政令で定めるもの」だけです。条文は「クレーンの運転」と例示するだけで、どのクレーンかを書いていません。それを決めるのが安衛令20条で、「法第六十一条第一項の政令で定める業務は、次のとおりとする」と受けます
ふたつめ。就くことができるのは「免許を受けた者」「技能講習を修了した者」、そして「その他厚生労働省令で定める資格を有する者」——3つです。「免許か技能講習の2択」と覚えると、3つめが抜けます。

特別教育は、61条には出てこない

3段目の特別教育は、61条にはひとことも出てきません。別の条文——安衛法59条3項です。
「事業者は、危険又は有害な業務で、厚生労働省令で定めるものに労働者をつかせるときは、厚生労働省令で定めるところにより、当該業務に関する安全又は衛生のための特別の教育を行なわなければならない」
これを受けるのが安衛則36条で、「法第五十九条第三項の厚生労働省令で定める危険又は有害な業務は、次のとおりとする」と始まります
つまり、条文の住所が違う
資格を定める条文業務を名指しするのは
免許 / 技能講習 / 省令で定める資格安衛法61条(就業制限)安衛令20条
特別教育安衛法59条3項(安全衛生教育)安衛則36条
ここが本丸です。特別教育で足りる業務は、そもそも「就業制限業務」ではありません。 61条の話ではなく、59条の話だからです。

線は「5トン」と「1トン」の2本だけ

では、どこで段が切り替わるか。安衛令20条が名指ししたクレーン系の業務は、これだけです。
「六 つり上げ荷重が五トン以上のクレーン(跨こ線テルハを除く。)の運転の業務 七 つり上げ荷重が一トン以上の移動式クレーンの運転(…道路…上を走行させる運転を除く。)の業務 八 つり上げ荷重が五トン以上のデリツクの運転の業務」
玉掛けは16号です。「十六 制限荷重が一トン以上の揚貨装置又はつり上げ荷重が一トン以上のクレーン、移動式クレーン若しくはデリックの玉掛けの業務
裏返して、安衛則36条が特別教育の側に置いているのが、この下の帯です。
「十五 次に掲げるクレーン(移動式クレーン…を除く。以下同じ。)の運転の業務 イ つり上げ荷重が五トン未満のクレーン ロ つり上げ荷重が五トン以上の跨こ線テルハ 十六 つり上げ荷重が一トン未満の移動式クレーンの運転(道路上を走行させる運転を除く。)の業務 十七 つり上げ荷重が五トン未満のデリツクの運転の業務 … 十九 つり上げ荷重が一トン未満のクレーン、移動式クレーン又はデリツクの玉掛けの業務
出てくる数字は、5トン1トンしかありません。
ひとつだけ、先に片づけておきます。6号の括弧書き「(跨こ線テルハを除く。)」です。5トン以上でも跨線テルハは就業制限から外れ、安衛則36条15号「つり上げ荷重が五トン以上の跨こ線テルハ」=特別教育の側に置かれています。つまり5トン以上でも特別教育で足りるクレーンが、条文にひとつだけある。線は2本のままですが、この1点だけは例外として持っておきます(なぜ「除く」が特別教育行きになるのか、その構造は「その先」で扱います)。

業務ごとに読む

免許と技能講習の切り分けは、クレーン等安全規則が決めています。
クレーン(5トンの線) 「令第二十条第六号に掲げる業務については、クレーン・デリック運転士免許を受けた者でなければ、当該業務に就かせてはならない。ただし、床上で運転し、かつ、当該運転をする者が荷の移動とともに移動する方式のクレーン(以下「床上操作式クレーン」という。)の運転の業務については、床上操作式クレーン運転技能講習を修了した者を当該業務に就かせることができる」
移動式クレーン(1トンと5トンの線) 「令第二十条第七号に掲げる業務については、移動式クレーン運転士免許を受けた者でなければ…ただし、つり上げ荷重が一トン以上五トン未満の移動式クレーン(以下「小型移動式クレーン」という。)の運転の業務については、小型移動式クレーン運転技能講習を修了した者を…就かせることができる」
デリック(5トンの線) 「令第二十条第八号に掲げる業務については、クレーン・デリック運転士免許を受けた者でなければ、当該業務に就かせてはならない」。22条・68条にあった「ただし」が、ここには出てきません。
玉掛け(1トンの線) 「令第二十条第十六号に掲げる業務(制限荷重が一トン以上の揚貨装置の玉掛けの業務を除く。)については、次の各号のいずれかに該当する者でなければ… 一 玉掛け技能講習を修了した者」。免許は出てきません。
まとめると、こうなります。
業務免許でなければ就けない技能講習で足りる特別教育で足りる
クレーン5トン以上(跨線テルハを除く5トン以上の床上操作式5トン未満/5トン以上の跨線テルハ
移動式クレーン5トン以上1トン以上5トン未満(小型1トン未満
デリック5トン以上(出てこない)5トン未満
玉掛け(出てこない)1トン以上1トン未満

ひとことで持って帰るなら

就業制限は、安衛令20条が名指しした業務だけ。クレーン系に出てくる線は5トンと1トンの2本だけ。そして特別教育で足りるものは就業制限の外(59条の話)
表を丸ごと覚えなくても、この形なら忘れても組み立て直せます。去年の出題を気にする必要も、なくなります。
この先は「その先」——AIコーチ加入者の読み物です

ここまでが「試験ではここまで」。この先は、答えがそう決まる判断の構造(法律→指針・通達→判例のつながり)まで踏み込みます。

  • なぜ3段になるのか——61条は「並列」で書いている
  • 段数は業務ごとに違う——3段そろうのは移動式だけ
  • 跨線テルハ——政令が「外す」と書き、省令が「入れる」と書く
  • 就業制限は「トン」だけではない——令20条の横断
  • 「道路上を走行させる運転を除く」は、どこに付いているか
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出典

この記事は 2026.04.01 時点の法令で書いています。法令・通達・判決文は著作権法13条により自由に利用できます。内容は必ず原文もご確認ください。