「選択肢に『この法律』『この章』『この項』みたいな言葉が出てくる。これ、覚えないといけないのかな。線引きが分からない」——受験生の方から届いた疑問です。
数えてみました。当アプリの公開2,376問のうち、問題文・選択肢・解説のどこかに「この法律」「この項」「同条」「次に掲げる」といった言葉が出てくる問題は551問。約4問に1問です。迷うのは当然の頻度でした。
先に結論です。これらの言葉そのものは、覚える対象ではありません。 正体は、条文が自分自身を指すときの指示語です。
条文は自分の名前を名乗らない
雇用保険法6条を原文のまま見てください。
「次に掲げる者については、この法律は、適用しない。一 一週間の所定労働時間が二十時間未満である者」
ここでの「この法律」は、雇用保険法そのもののことです。雇用保険法の条文の中で「雇用保険法は適用しない」とは書かない——自分のことは「この法律」と呼ぶ。それだけのことです。「この章」「この項」も同じで、その言葉が置かれている章や項を指しています。
当アプリは、根拠条文を原文のまま(逐語で)お見せする方針です。読みやすく言い換えた瞬間、その文はもう「条文」ではなくなるからです。だから指示語も原文のまま残ります。「この法律」がどの法律なのかは、解答後の「この問題に効く条文」パネルに法令名と条番号(例: 雇用保険法 第6条)で必ず出ます。そこで確かめられれば十分です。
覚えない言葉と、覚える中身の線引き
| 出てくる言葉 | 覚える? | 理由 |
|---|---|---|
| この法律・この章・この項・この条 | 覚えない | 条文が自分自身(の一部)を指す指示語 |
| 同法・同条・前条・前項 | 覚えない | 直前に出てきた条文を指す指示語 |
| 次に掲げる・次の各号・以下の | 覚えない | 「ここからリストが始まる」という合図 |
| 別表第一に掲げる事業(労基法)など | 指し先の中身は覚える | 指し先の中身そのものが繰り返し問われる |
線引きはこうです。指示語そのものは覚えない。ただし、指し先の中身が繰り返し問われるものは、中身を覚える。 たとえば労災保険法3条2項は「国の直営事業及び官公署の事業(労働基準法(…)別表第一に掲げる事業を除く。)については、この法律は、適用しない」と定めています。一つの条文に「この法律」(=労災保険法・覚えない側)と「別表第一に掲げる事業」(=指し先の中身が適用範囲を分ける・覚える側)が同居している例です。当アプリにも「別表」を問う問題が13問あります。この場合に覚えるのは「別表第一」という名前ではなく、そこに何が並んでいるかです。
この先は「その先」——AIコーチ加入者の読み物です
ここまでが「試験ではここまで」。この先は、答えがそう決まる判断の構造(法律→指針・通達→判例のつながり)まで踏み込みます。
- 実例で「この項」「第二号」を解決してみる
- 条文の座標系——条・項・号・イロハ
- 定義規定——条文の「あだ名」の付け方
- もう一段——原文で追う訓練