「受給期間は1年でしょ?」で止まると落ちる。1年を動かすスイッチは、20条の中に3つあります

2026.04.01 法令基準最終検証 2026.07.1713受給期間所定給付日数算定基礎期間特定受給資格者

広告はありません。事実には出典がついていて、その場で原文を確かめられます。

「基本手当の受給期間は?」と聞かれて、反射で「1年」と答える。これ自体は間違っていません。でも、そう答えて失点する問題があります。
理由はシンプルで、1年を動かすスイッチが、同じ条文の中に置いてあるからです。しかも条文は、あなたが覚えているのとは少し違う書き方をしています。ここを一度そろえておくと、この論点はもう崩れません。

つまずきの正体は、20条が一文で2つのことを言っていること

まず、用語の交通整理から。ここが混ざると、いつまでもスッキリしません。
条文を見てください。基本手当は「当該各号に定める期間(…)内の失業している日について、第二十二条第一項に規定する所定給付日数に相当する日数分を限度として支給する」
この一文に、限度が2つ入っています。
期間の中で、日数を消化する。別モノですが、条文が一文で結んでいるとおり、この2つは無関係ではありません。むしろ——日数のほうが、期間を動かすのです。

1年を動かすスイッチは、20条に3つある

受給期間の区分は、20条1項の各号がそのまま答えです
受給資格者の区分受給期間根拠
下の2つ以外の受給資格者(=原則)基準日の翌日から起算して1年20条1項1号
基準日において22条2項1号に該当する受給資格者1年に60日を加えた期間20条1項2号
基準日において23条1項2号イに該当する特定受給資格者1年に30日を加えた期間20条1項3号
ここが、この記事でいちばん持って帰ってほしいところです。
条文は「330日の人」とは書いていません。「23条1項2号イに該当する特定受給資格者」と、条番号で名指ししています。同じく「+60日」も「360日の人」ではなく「22条2項1号に該当する受給資格者」という名指しです。
では名指しされた先には何が書いてあるか。
結果として「330日の人は+30日」「360日の人は+60日」と一致します。日数で覚えても答えは合う。ただ、条文が指しているのは日数ではなく“区分”だと知っていると、選択肢の作り方が読めるようになります。
そして3つめのスイッチ。20条1項の括弧書きです。「当該期間内に妊娠、出産、育児その他厚生労働省令で定める理由により引き続き三十日以上職業に就くことができない者が、厚生労働省令で定めるところにより公共職業安定所長にその旨を申し出た場合には、当該理由により職業に就くことができない日数を加算する。これが、いわゆる受給期間の延長です。

「4年と30日」という期間は、条文上どこにも無い

延長の話には、上限がセットで書かれています。同じ括弧書きの続きです。「その加算された期間が四年を超えるときは、四年とする
読み方に注意してください。上限は「1年+3年」でも「もとの期間+3年」でもなく、加算された期間そのものを4年で頭打ちにする書き方です。だから、もともと「1年+30日」の人が延長を申し出ても、4年を超えることはありません

3つめのスイッチ=定年退職者の「まだ探しません」

これはあまり語られませんが、20条2項に独立したスイッチがあります。
離職が定年(厚生労働省令で定める年齢以上の定年に限る)に達したこと等による受給資格者が、離職後一定の期間求職の申込みをしないことを希望して公共職業安定所長に申し出たときは、各号の期間に「求職の申込みをしないことを希望する一定の期間(一年を限度とする)に相当する期間」を合算する——という仕組みです

日数を出すには、まず算定基礎期間

受給期間のスイッチが「区分」で決まる以上、結局は算定基礎期間離職理由年齢にたどり着きます。
算定基礎期間の作り方は22条3項です。原則は「基準日まで引き続いて同一の事業主の適用事業に被保険者として雇用された期間(…被保険者であつたことがある者については、当該雇用された期間と当該被保険者であつた期間を通算した期間)」前の会社の期間は、足せるのが出発点です。
ただし、ただし書きが4つ、除くものを並べています
除かれる期間
被保険者となった日の直前の被保険者でなくなった日が、その被保険者となった日前1年の期間内にないとき → その直前の被保険者でなくなった日の被保険者であった期間22条3項1号
基本手当又は特例一時金の支給を受けたことがある → その受給資格・特例受給資格に係る離職の日以前の被保険者であった期間2号
教育訓練休暇給付金の支給を受けたことがある → 休暇開始日前の被保険者であった期間及び当該給付金の支給に係る休暇の期間3号
育児休業給付金又は出生時育児休業給付金の支給を受けたことがある → これらの給付金の支給に係る休業の期間4号
1号は裏返して読むのがコツです。「1年の期間内にないとき」に除く=空白が1年以内なら、前の期間は生き残って通算される。2号も同じ発想で、前の分で基本手当を受け取っていたら、そこから先は精算済み、という線が引かれています。

特定受給資格者の日数表を、そのまま表にする

「+30日」の入口だった23条1項を、条文の順で表にします。太字が、20条1項3号が名指ししている2号イです。
基準日の年齢1年以上5年未満5年以上10年未満10年以上20年未満20年以上
60歳以上65歳未満(1号)150日180日210日240日
45歳以上60歳未満(2号)180日240日270日330日(イ)
35歳以上45歳未満(3号)150日180日240日270日
30歳以上35歳未満(4号)120日180日210日240日
30歳未満(5号)対象外120日180日180日
30歳未満の「対象外」は、柱書が理由です。23条1項は「算定基礎期間が一年(第五号に掲げる特定受給資格者にあつては、五年)以上のものに限る」と、入口で線を引いています。その線に届かない人は23条ではなく、22条1項の原則の日数(20年以上150日/10年以上20年未満120日/10年未満90日)で見ることになります

「特定受給資格者」とは、条文では2行しかない

23条2項の定義は、驚くほど短いです
どちらの号も、最後は「厚生労働省令で定める」に投げています。だから条文だけでは、具体的にどこまでが特定受給資格者なのか分かりません。中身はハローワークが公表している「特定受給資格者の範囲」で確かめる——という二段構えです。
そこを見ると、「倒産」等により離職した者の中に、こう並んでいます
「倒産」等により離職した者
(1) 倒産(破産、民事再生、会社更生等の各倒産手続の申立て又は手形取引の停止等)に伴い離職した者
(2) 事業所において大量雇用変動の場合(1か月に30人以上の離職を予定)の届出がされたため離職した者及び当該事業主に雇用される被保険者の3分の1を超える者が離職したため離職した者
(3) 事業所の廃止(事業活動停止後再開の見込みのない場合を含む。)に伴い離職した者
(4) 事業所の移転により、通勤することが困難となったため離職した者

ひとことで持って帰るなら

受給期間(期間)と所定給付日数(日数)は別モノ。でも、日数の“区分”が期間を動かす。だから受給期間を聞かれたら、いったん所定給付日数まで降りて、区分(=年齢・算定基礎期間・離職理由)を確定してから戻ってくる。この往復の順番を体で覚えておくと、同じ形の問題で崩れなくなります。
そして最後にもう一度。条文は「330日なら+30日」とは書いていません。書いてあるのは「23条1項2号イに該当する特定受給資格者なら+30日」です

出典

この記事は 2026.04.01 時点の法令で書いています。法令・通達・判決文は著作権法13条により自由に利用できます。内容は必ず原文もご確認ください。 この記事の note 版は こちら(note版は公開時点のまま更新されません。最新はこのページです)。