確定給付企業年金法と確定拠出年金法。何回テキストを読んでも混ざる、という声をよく見ます。
これは暗記量の問題ではなく、読む順番の問題です。2つの法律の1条を並べて読むと、給付まわりの主要な違いは、そこから理屈で並びます。理屈では出てこないものだけが、覚えるべき暗記です。この記事では、その暗記が何個あるのかまで数えます。
なお確定拠出年金には、会社が実施する企業型年金と、自分で入る個人型年金(iDeCo)があります。ここは会社の制度どうしの比較なので、確定給付企業年金と企業型の確定拠出年金を並べます。
まず、1条を並べる
確定給付企業年金法1条は「事業主が従業員と給付の内容を約し、高齢期において従業員がその内容に基づいた給付を受けることができるようにするため」と書いています。
確定拠出年金法1条は「個人又は事業主が拠出した資金を個人が自己の責任において運用の指図を行い、高齢期においてその結果に基づいた給付を受けることができるようにするため」です。
違いは、どこを約束したか。その一点です。
確定給付企業年金(DB)が約束したのは、出口。将来いくら渡すかを先に約す。
確定拠出年金(DC)が約束したのは、入口。いくら払い込むかまでを決めて、その先は本人の運用しだい。
DBはDefined Benefit、Benefit=給付が定まっている。DCはDefined Contribution、Contribution=拠出が定まっている。略号の中に答えが入っています。混ざったら、名前に戻れば立て直せます。
| ◎=1条から出る/△=覚えるしかない | 確定給付企業年金(DB) | 確定拠出年金・企業型(DC) |
|---|---|---|
| ◎ 1条が約束したもの | 出口。将来いくら渡すかを事業主が従業員と約す | 入口。いくら払い込むかまで。その先は自己責任の運用 |
| ◎ 積立が足りないとき | 事業主等が掛金を再計算して埋める(62条・63条) | 埋める規定なし。給付が減る=制度の前提 |
| ◎ 60歳前に辞めたら | 脱退一時金が本体の給付(29条・41条) | 本則になし。附則の「当分の間」の例外 |
| ◎ 年金の払い方 | 終身または5年以上・毎年1回以上(33条ただし書) | 5年以上20年以下(施行令5条1号) |
| △ 給付の種類 | 老齢給付金・脱退一時金+障害給付金・遺族給付金(規約で追加) | 老齢給付金・障害給付金・死亡一時金の3つ |
| △ 受給年齢を決めるのは | 規約。60歳以上70歳以下の幅で | 法律。通算加入者等期間に応じ60〜65歳で階段状 |
| △ 「3年」の意味 | 脱退一時金の要件にできる加入者期間の上限 | 使用された期間が3年未満=事業主掛金を返還できる線 |
| △ 実施の手続と主体 | 規約型=承認/基金型=認可 | 企業型=承認のみ |
理屈で出る(1)積立が足りないとき、誰が埋めるか
言葉を2つだけ。積立金は、実際に積まれているお金。責任準備金は、約束した給付を将来払い切るために、いま積まれていなければならない額です。
確定給付企業年金法62条は、61条の決算での計算の結果、積立金の額が責任準備金の額に照らして厚生労働省令で定めるところにより算定した額を下回っている場合には、掛金の額を再計算しなければならない、としています。事業主等というのは、事業主または企業年金基金のことです。
さらに、積立金の額が最低積立基準額を下回っている場合には、下回った額を基準として算定した額を、事業主が掛金として拠出しなければなりません。足りなければ掛金で埋めにいく。これがDBの姿です。
DCに、この積立不足という考え方はありません。1条で「結果に基づいた給付」と宣言している以上、運用が振るわなければ受け取る額が減る。それが制度の前提だからです。
理屈で出る(2)60歳より前に辞めたら、お金はどうなるか
DBは、脱退一時金が本体の給付です。確定給付企業年金法29条1項は、事業主等が行う給付を老齢給付金と脱退一時金の2つと定めています。この2つは必ず行う。
DCの脱退一時金は、本則にありません。附則です。確定拠出年金法の附則2条の2は「当分の間」で始まり、個人別管理資産の額が政令で定める額以下であること、最後に企業型年金加入者の資格を喪失した日が属する月の翌月から起算して6月を経過していないことなど、複数の要件を満たした人だけが請求できます。
法律は、中心的なルールを書く本則と、経過措置や当分の間の特例を書く附則に分かれています。附則にあるということは、それが原則ではなく、当面のあいだ開けてある例外の扉だ、ということです。
なぜ、ここまで扱いが違うのか。
DCは、辞めても個人別管理資産、つまり本人の名義で積み上がっている残高が、本人について次の器へ移ります。この持ち運びを移換と呼びます。関係が切れないので、その場で現金にする必要がない。
DBは逆です。約束した相手である事業主との関係が、辞めた時点で切れます。約束の相手がいなくなる以上、その場で清算するしかない。だから脱退一時金が本体の給付になっています。
1条の「事業主が従業員と約し」と「個人が自己の責任において運用の指図」から、そのまま出てきます。
なお、DCで60歳より前に開かないのは老齢給付金の出口です。障害給付金は、障害認定日から75歳に達する日の前日までの間に政令で定める程度の障害の状態に該当するに至ったときに請求でき、死亡一時金は加入者等が死亡したときにその遺族に支給されます。どちらも年齢で出口が閉じているわけではありません。
理屈で出る(3)終身年金にできるのは、どちらか
確定給付企業年金法33条は、年金給付の支給期間と支払期月は政令で定める基準に従い規約で定めるところによる、としたうえで、ただし書で「終身又は五年以上にわたり、毎年一回以上定期的に支給するものでなければならない」と縛っています。
DCはどうか。ここを「縛りがない」と覚えると、逆に失点します。縛る場所が、法律ではなく政令だというだけです。確定拠出年金法施行令5条1号は、年金として支給されるものの支給予定期間を「五年以上二十年以下の期間」と定めています。
DB=終身または5年以上、DC=5年以上20年以下。この対比も1条から読めます。DBは出口の額を約束しているので、亡くなるまで払い続ける終身年金が組める。DCで配れるのは、その人の残高が尽きるまでです。有限の残高だから、期間を区切って取り崩す。
ここからは、理屈では出ません
以下の4つは、条文がそう決めたというだけで、趣旨から導けません。ここだけを暗記の箱に入れます。
覚える(1)給付の名前が、DBとDCでずれている
確定給付企業年金法29条は、事業主等が行うのは老齢給付金と脱退一時金の2つとしたうえで、規約で定めれば障害給付金と遺族給付金を行うことができる、としています。
確定拠出年金法28条の企業型年金の給付は、老齢給付金、障害給付金、死亡一時金の3つです。
ずれは2種類あります。名前のずれ——人が亡くなったときの給付が、DBは遺族給付金、DCは死亡一時金。扱いのずれ——障害給付金は、DBでは規約で追加する任意の給付なのに、DCでは28条に並ぶ法定の給付です。必須と任意が入れ替わっています。
脱退一時金がDCに存在しないわけではありません。本則の28条には無い、というのがここでの事実です。
覚える(2)もらえる年齢を、誰がどう決めるか
DBは規約で決めます。確定給付企業年金法36条2項1号は「六十歳以上七十歳以下の規約で定める年齢に達したときに支給するものであること」としています。もう1つ、36条4項は、規約において20年を超える加入者期間を老齢給付金の給付を受けるための要件として定めてはならない、と縛ります。長く勤めないと年金を出さない、を規約で20年より厳しくはできない、という上限規制です。
DCは法律が決めます。確定拠出年金法33条1項は、通算加入者等期間に応じて、老齢給付金を請求できる年齢を階段状に定めています。通算加入者等期間とは、ざっくり、確定拠出年金に加入していた期間と、掛金を出さず運用だけしていた期間の合計です。
読み方は「この年齢から請求したいなら、最低これだけの期間が要る」です。
| 請求したい年齢 | 必要な通算加入者等期間 |
|---|---|
| 60歳以上61歳未満 | 10年 |
| 61歳以上62歳未満 | 8年 |
| 62歳以上63歳未満 | 6年 |
| 63歳以上64歳未満 | 4年 |
| 64歳以上65歳未満 | 2年 |
| 65歳以上 | 1月 |
10年、8年、6年、4年、2年と2年ずつ減っていき、65歳で1月になる。期間が短い人ほど、受け取れる年齢が後ろにずれます。
この通算加入者等期間は、企業型年金加入者期間や個人型年金加入者期間などを合算した期間ですが、その者が60歳に達した日の前日が属する月以前の期間に限られます。60歳以降に積んだ期間は、階段を降ろしてくれません。そして33条1項にはただし書があり、60歳以上75歳未満の人は、通算加入者等期間を持たなくても、企業型年金加入者となった日その他厚生労働省令で定める日から起算して5年を経過した日から請求できます。
覚える(3)「3年」が、DBとDCで別の意味になる
確定給付企業年金法41条3項は、41条2項1号に係る脱退一時金を受けるための要件として、規約において3年を超える加入者期間を定めてはならない、としています。長く加入しないと脱退一時金を出さない、を規約で3年より厳しくはできない、という上限規制です。3年経てば必ずもらえる、という意味ではありません。
確定拠出年金法3条3項10号は、企業型年金加入者が資格を喪失した日において実施事業所に使用された期間が3年未満である場合に、事業主掛金に相当する部分を事業主に返還することを規約で定められる、としています。裏返しに、3年以上である場合、または障害給付金の受給権を有する場合について、個人別管理資産が移換されるときはその全てを移換するものとされていなければ、規約は承認されません。
同じ3年でも、DBは規約で要求できる加入者期間の上限、DCは事業主にお金を返す線。しかも単位が違います。DBは加入者期間、DCは実施事業所に使用された期間です。
覚える(4)承認か認可か、そして「基金」がどこに出てくるか
確定給付企業年金法3条1項は、まずどちらの型でも規約を作成させたうえで、その規約について厚生労働大臣の承認を受ける(規約型)か、企業年金基金の設立について厚生労働大臣の認可を受ける(基金型)か、の分岐にしています。基金型でも規約は作ります。分岐するのは、承認か認可かだけです。
確定拠出年金法3条1項は、企業型年金を実施しようとする事業主に、労働組合等の同意を得て規約を作成し、当該規約について厚生労働大臣の承認を受けなければならない、と定めています。承認だけで、基金の設立という分岐はありません。実施主体としての基金は出てこない、ということです。
ただし「企業年金基金」という言葉自体は、DCにも登場します。確定拠出年金法8条1項1号。企業型年金の積立金について結ぶ資産管理契約の相手方として、信託会社や信託業務を営む金融機関と並んで、企業年金基金が挙げられています。実施主体なのか、資産の置き場なのか。ここで切り分けてください。
まとめ
覚えることは、結局1つです。DBは出口(給付)を約束した制度。DCは入口(拠出)を約束した制度。
そこから理屈で並ぶのが3つ。積立が足りないときに誰が埋めるか、60歳前に辞めたときにお金がどう動くか、終身年金にできるのはどちらか。
理屈では出ないので覚えるのが4つ。給付の名前のずれ、受給年齢の決め方、3年の意味、承認と認可。
テキストが混ざるのは、この仕分けをせずに、全部を同じ重さで覚えにいくからです。1条に戻れば、少なくとも半分は覚えなくて済みます。
この先は「その先」——AIコーチ加入者の読み物です
ここまでが「試験ではここまで」。この先は、答えがそう決まる判断の構造(法律→指針・通達→判例のつながり)まで踏み込みます。
- 法律に「書いていない」を、規定がないと読むと落ちる
- 「約束した額は減らせない」の実像
- DBとDCの二分法が崩れる場所
