日立製作所横浜工場事件|転籍(移籍出向)には労働者の承諾が必要
いまの会社との雇用関係を終わらせ、移籍先の会社との間に新しい雇用関係を作る「転属」(=今日でいう転籍・移籍出向。判決文中の『転属』は本件ではこれを指す当時の呼称)は、労働者の承諾があって初めて効力を生ずるとした最高裁判例(最一小・昭和48年4月12日)。雇い主に残ったまま他社で働く在籍出向(規定の整備があれば個別の同意なしに命じ得る)と違い、転籍は雇い主そのものが変わるため、本人の承諾が欠かせません。
日立製作所横浜工場事件
争点 — なにが争われた?
従来の会社との雇用関係を終了させ、移籍先の会社との間に新たに雇用関係を生じさせる「転属」(=転籍・移籍出向)は、労働者の承諾がなくても効力を生じるか。
結論 — どうなった?
転属(転籍)は、労働者の承諾があって初めてその効力を生ずる。本件では、承諾を要しないとする慣行その他特段の事情も原審で認定されていない。
覚える一文 — 判決原文のまま・選択式で狙われる
「従来からの会社との間の雇用関係を終了させ、移籍先の会社との間に新たに雇用関係を生ぜしめるいわゆる転属は、労働者の承諾があつてはじめてその効力を生ずる。」
記憶フック
在籍出向=規定の整備があれば個別の同意なしでも命じ得る(新日本製鐵事件)。転籍(移籍出向)=雇い主が変わるので本人の承諾がなければ効力を生じない(本判決)。「在籍は規定・転籍は承諾」の対比で覚える。
試験でねらわれるポイント
- 在籍出向との対比で押さえる。在籍出向は、就業規則・労働協約に出向(社外勤務)規定があり、労働者の利益に配慮した詳細な規定が整備されているという事情の下では、個別の同意なしに命じ得るとされた(新日本製鐵事件・最二小・平成15年4月18日)。これに対し転籍(移籍出向)は、従来の会社との雇用関係を終了させて移籍先と新たな雇用関係を生じさせるため、労働者の承諾があって初めて効力を生ずる(本判決・最一小・昭和48年4月12日)。
- 承諾が必要な理由(判決理由の逐語・文中からの引用):「…労働契約の一身専属的性格にかんがみ、原審が労働者である被上告人の承諾があつてはじめて右転属が効力を生ずるものとした判断は、相当として是認することができる」。民法625条1項も「使用者は、労働者の承諾を得なければ、その権利を第三者に譲り渡すことができない。」と定めており、本判決の参照法条にも民法625条が挙がっている。
- 本件で労働者はいったん転属を承諾していたが、原審はその承諾を「要素の錯誤により無効」と認定判断し、労働者は移籍先の従業員たる地位を取得しなかった(最高裁も、この認定判断と異なる前提に立つ上告理由は採用できないとして斥け、上告を棄却)。また判決は「右承諾を要しないとする慣行その他特段の事情」が本件では原審で認定されていないと述べるにとどまり、そうした事情があれば承諾不要になると正面から判示したわけではない。原則は本人の承諾。
このカードは、裁判所が公表する判決文とその要旨をもとにAIが下書きしたものです。「覚える一文」は原文と一字一句同じであることを確認し、さらにAIが再チェックしています。出典は上のリンクをご覧ください。